預貯金とその使い込み

以前は、預貯金債権について相続人間で遺産分割協議を経なくても、各相続人が自分の法定相続分に当たる金額を金融機関で個別に払い戻してもらうことができました。しかし、2016年12月19日の最高裁による判例変更によって、預貯金債権は遺産分割協議を経なければ払い戻しに応じてもらえなくなりました。
このため、少額の預貯金であっても、相続人間での話合いが不可欠になったのです。

「うちは預貯金だけだから、法定相続分を掛け算すればいいじゃないか」

と言う人もいますが、いざ話し合ってみると「特別受益」「寄与分」などの問題が噴出するというケースも少なくありません。

 

そして、預貯金の場合、もう一つの隠れた問題が「使い込み」です。

金融機関の取引履歴は、有料ですが10年分さかのぼることができます。すると、被相続人の生前から死亡日を挟んで口座凍結の日までに、数十万円から時には数百万円もの不審な引出しが記録されていることがあります。

その口座を実質的に管理していた特定の相続人が横領したのではないかという疑惑が持たれ、相続人間で争いになることもしばしばです。

法的には、

  • 被相続人の医療費や施設費や生活費等に使われたのであれば問題なし
  • 被相続人が特定の相続人に贈与したのであれば、特別受益として遺産に持ち戻す
  • 特定の相続人が被相続人に黙って引き出して使い込んだのであれば、他の相続人は損害賠償請求または不当利得返還請求をすることができる

ということになります。

このような疑惑がある場合、または自分が疑われたという場合には、専門家である弁護士にお早目にご相談ください。